2019/11/05
イベント
レッスンレポート 「ELECTRIC BASS SPILITS」Vol.5
SHEENA & THE ROKKETSの奈良敏博氏によるベースレッスン「ELECTRIC BASS SPILITS」の第5回目が、10月29日にStudioBpm.-kandaにて開催された。
「今回はソウルをやります!」
開始早々、奈良氏はそういってにやりと笑う。
「これまでよりテンポが速く、指の運びも複雑かもしれませんが挑戦してみましょう」
今回、課題曲として、
・フォートップスの「It's The Same Old Song」
・オーティス・レディング「Day Tripper」
・ジェームス・ジェマーソン「I can't help myself」
ほかにもチャック・レイニーなど、ソウルまたはR&B、なかでもモータウンといったジャンルから、オールディーズな楽曲が選ばれた。
まずは「Day Tripper」を題材にミュートについて学んだ。ビートルズの楽曲だが、今回はオーティス・レディングのバージョンだという。
たしかにこれまでの練習曲に比べてアップテンポではあるものの、受講者たちは割とあっさり奈良氏のスピードについていく。ただし、何かが違う。どうしても受講者たちの音が、奈良氏のそれにくらべて平板に聞こえるのだ。
「じつはミュートなんです。つながっている音をミュートして“ボッ”と区切ることで、音に弾みがつくんですね」
受講者たちは数回の練習で、Day Tripper冒頭の1音目と2音目の間に“ボッ”をいれることに成功。たしかに、曲の表情がまったく違って聞こえてきた。
続く楽曲で、さらにミュートのレッスンだ。こんどはワンフレーズを、左手で押弦しながら奏でる奏法だという。
「ぼくらは“プクプク”なんて呼んでますが、左手で弦を押さえながら演奏する。こうすることで高い音がプクプク鳴るから、音に変化を付けることができます」
音を消すだけでなく、音色を変える。
ミュートひとつでも、演奏の幅が広がることが分かった。
ここで、おなじみ同スタジオ・スタッフでもあるドラマー・的場誠也氏がサポートとして参加。「I can't help myself」を題材に、奈良氏が受講者たちに基調となるパターンを繰り返させる。何小節かつづけた後に、ドラムがフィルをいれるタイミングで、
「それぞれ自由に弾いてみて下さい」
と、いわばムチャ振り。
わずかに数音を入れるだけだが受講者たちは四苦八苦。フィルインに合わせて、うまいフレーズをいれられずに手こずったようだ。
それでもこれを延々と続けると、最後にはそれなりに締まったアドリブが入るようになる。目に見える(耳に聞こえる?)進歩とはこのことだろう。
さらに「It's The Same Old Song」では、基調となるリズムが数小節繰り返されたあと、2小節分の空きができる。ここをソロで回せ、いう過酷な指示。
受講者のレベルが如実に出てしまう瞬間だった。ライブなどの経験のある受講者は、自前のフレーズをいくつか披露。それでも延々と繰り返すうちにネタが尽きてしまい困惑の様子。ライブ経験のない受講者の場合は、
「ただでさえ、これまで以上に運指が複雑で速く感じる曲なのに、これをクリアするだけでなく、さらにソロ! 得意なフレーズがあるわけでもなく、ソロでいったい何を弾けばいいのかもわからず、ただ音を出していただけでした…」
講師の奈良氏は笑いながらこう言う。
「いきなりソロっていわれて、それも何回も繰り返さなくちゃいけないっていうのは、かなり高度な注文でしたね。でも、これでいかに“自分のフレーズ”を持つことが大事かが分かったと思います。このレッスンでいろんな曲をやっていくことで、真似したいフレーズに気付いたり、自分の好きなフレーズ、得意なフレーズができていく。そのためにもいろんな曲に挑戦するのがいいんです」
一度は耳にしたことがある楽曲から特徴的なフレーズを選び、「弦を押さえる指が痛くなるほど」(受講者)セッションを繰り返した今回のレッスン。
ときにムチャな指示もでるが、これこそが「生きたレッスン」といえそうだ。
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