2020/07/15
イベント
レッスンレポート 「ELECTRIC BASS SPILITS」Vol.11
「こんな状況の中で集まってもらって、本当にありがとうございます!」
コロナによる長期開催自粛をへて6月26日、SHEENA & THE ROKKETSのベーシスト・奈良敏博氏によるレッスン「ELECTRIC BASS SPILITS」の第11弾が、じつに3ヶ月ぶりに開催された。
冒頭の奈良氏の挨拶に、おもわず参加者たちからは拍手が起こった。待望のベースレッスンだったということなのだろう。
3ヶ月ぶりの奈良ワールド
今回のレッスンは、そのスタートからユニークだった。
まず参加者のうち上級のIさんが、まずやり玉に挙がる。奈良氏はいうのだ。
「Iさんはいつも若々しいよね。モテそうだけど、じゃ、その若さの秘訣をEコードで弾いてみて!」
一瞬面食らったIさんだが、そこは上級者の意地を見せて、Eではじまるフレーズを弾き始める。すると奈良氏の目配せを受けてか、初級者ながら果敢なチャレンジャーでもあるTさんもそれに追随して、適所にオカズを入れていく。これを補完する奈良氏のベースラインが入ると、これでもう、一つのセッションだ。調和の取れた音律がつづく。
見学者も、冒頭からセッションに引き込まれ、最後の締めにつづく奈良さんの、
「かっこいいね! Iさんに拍手!」
の声に、一同拍手や足拍子でエールを送る。
次いで奈良氏は、上級IさんにはBmからAへ続くコード進行を、初級Tさんにはそれに合わせたフレーズを指示する。
そして「ワン、ツー…」とカウントすると、これもぶっつけ本番の演奏がスタート。
Iさんはともかく、Tさんはまずはフレーズになれるのに時間を要しつつ、何度も何度も繰り返す。時折出される奈良氏からのヒントを参考に、なんとかIさんとのセッションが形成されていく。
しかしIさんも、そう簡単にはついて来させまいと、アドリブをいれて元の音程やリズムに変化をもたせていく。Tさんもなんとか食らい付いて…。そんなことを繰り返しながら、いつしか最初のフレーズとはまったく別の曲がやりとりされているのに気づかされる。
時折出される奈良氏のヒントも絶妙だ。
Iさんが主となるフレーズにアドリブを加えて演奏するなか、Tさんが躓くと、「こんどは下から上に音階を上げてみて」と一声。すると同じ曲が、別の姿を見せ始める。もちろんそこには奈良さんによる即興の旋律が入って曲調を変えていく。
さらに奈良氏は、初級のTさんにスラップ奏法でのフレーズを指示。加えて当スタジオスタッフの的場氏にもドラムとして参加することを要求する。
毎度シビれることながら、奈良氏が「ズ、ズ、チャ、ズ」と一声ささやくと、その意をくんで的場氏が的確なリズムをうみだしていく。そのあたり、さずが長年プロとしての現場をともにしてきた二人が見せる掛け合いの妙が光る。
リズムに乗ってIさんの独自なコード進行で新しいフレーズが始まっていく。Tさんも習ったばかりのスラップで変化を見せる。
奈良氏はいつも通り、横から合いの手を入れるようにベースラインを展開。
負けじとIさん、Tさんが、ともに工夫を懲らし始めていく。同じフレーズが続くのを避けるように、絶えずアドリブに挑戦し、故意に基本フレーズを変化させ用とするのだ。
それに合わせて的場氏のドラムも変化を見せる。
その変化ごとに、参加者がそれぞれにアイコンタクトを交わして、自信の演奏に入り込んでいく。
飛び入り初参加、なのにいきなり…!
ここで、レッスン初参加の女性ベーシストKさんが飛び入りで参入。
いったん仕切り直して、今度はEm、C#m、Fを繰り返しながら、Iさんには下から上に上がっていく音階、Tさんは奈良氏とともに下がっていく音階が指示される。
一方で、途中参加のKさんには、
「とりあえず3~4弦の7~9フレット付近を適当に弾いてみて」
と、奈良氏はやや突き放したかのような指示を出すだけだ。
おそらくKさんのレベルを判断するために発した指示だったのだろう。
いざ、的場氏のカウントで合奏が始まると、すかさず奈良氏はKさんに、
「同じコード進行で、今度は緩急を付けてみて!」
と声をかけている。
いつも通りIさんとTさんのアドリブ合戦が続く中、奈良氏はKさんに、次に4弦開放とE7でフレーズを構成しつつリズムをとるよう指示。
何とかKさんがついて行くと、それをフォローするように奈良氏が別のフレーズをいれはじめる。
いつしか、みなで同じフレーズを一回ししながら、順番に2小節ずつアドリブをいれていく形に。それぞれがアドリブをキメると、そのたびに奈良氏の「Yeah!」のエールが響く。ノリが高じて、アドリブの難易度が上がっていく。
そのさなか、初参加のKさんがコード進行からひらめいたのか、「Smoke On The Water」のフレーズをアドリブに織り込んできた。
奈良氏の「オッ!」の声。
そうなるとアドリブ合戦にも熱が入る。Iさんは技巧を駆使し、TさんはKさんに刺激されてどこかで聞いたフレーズをねじ込んでくる。
アドリブだけでない。それぞれの基調フレーズも、飽き足らないのか、さまざまな技巧がいれられて、それぞれに別の要素が付け加わっていく。参加者によっては練習してきた独自フレーズを披露するケースも!
もう何回目の繰り返しになるのか――。
参加者たちがそれぞれステージで演奏しているかのように必死で、楽しげで、それぞれが連携しあって、音楽が生まれていく。
奈良氏や的場氏も含め、キャリアのまったく異なる演者5人のはずなのに、聴衆をうならせる調和を奏でていることに、毎度のことながらうならせられてしまうのだ。
レッスンを超え、もはや一つのショーとして成り立っている。
そんな印象を深くした11回レッスンだった。
※次回レッスン詳細はこちら
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コロナによる長期開催自粛をへて6月26日、SHEENA & THE ROKKETSのベーシスト・奈良敏博氏によるレッスン「ELECTRIC BASS SPILITS」の第11弾が、じつに3ヶ月ぶりに開催された。
冒頭の奈良氏の挨拶に、おもわず参加者たちからは拍手が起こった。待望のベースレッスンだったということなのだろう。
3ヶ月ぶりの奈良ワールド
今回のレッスンは、そのスタートからユニークだった。
まず参加者のうち上級のIさんが、まずやり玉に挙がる。奈良氏はいうのだ。
「Iさんはいつも若々しいよね。モテそうだけど、じゃ、その若さの秘訣をEコードで弾いてみて!」
一瞬面食らったIさんだが、そこは上級者の意地を見せて、Eではじまるフレーズを弾き始める。すると奈良氏の目配せを受けてか、初級者ながら果敢なチャレンジャーでもあるTさんもそれに追随して、適所にオカズを入れていく。これを補完する奈良氏のベースラインが入ると、これでもう、一つのセッションだ。調和の取れた音律がつづく。
見学者も、冒頭からセッションに引き込まれ、最後の締めにつづく奈良さんの、
「かっこいいね! Iさんに拍手!」
の声に、一同拍手や足拍子でエールを送る。
次いで奈良氏は、上級IさんにはBmからAへ続くコード進行を、初級Tさんにはそれに合わせたフレーズを指示する。
そして「ワン、ツー…」とカウントすると、これもぶっつけ本番の演奏がスタート。
Iさんはともかく、Tさんはまずはフレーズになれるのに時間を要しつつ、何度も何度も繰り返す。時折出される奈良氏からのヒントを参考に、なんとかIさんとのセッションが形成されていく。
しかしIさんも、そう簡単にはついて来させまいと、アドリブをいれて元の音程やリズムに変化をもたせていく。Tさんもなんとか食らい付いて…。そんなことを繰り返しながら、いつしか最初のフレーズとはまったく別の曲がやりとりされているのに気づかされる。
時折出される奈良氏のヒントも絶妙だ。
Iさんが主となるフレーズにアドリブを加えて演奏するなか、Tさんが躓くと、「こんどは下から上に音階を上げてみて」と一声。すると同じ曲が、別の姿を見せ始める。もちろんそこには奈良さんによる即興の旋律が入って曲調を変えていく。
さらに奈良氏は、初級のTさんにスラップ奏法でのフレーズを指示。加えて当スタジオスタッフの的場氏にもドラムとして参加することを要求する。
毎度シビれることながら、奈良氏が「ズ、ズ、チャ、ズ」と一声ささやくと、その意をくんで的場氏が的確なリズムをうみだしていく。そのあたり、さずが長年プロとしての現場をともにしてきた二人が見せる掛け合いの妙が光る。
リズムに乗ってIさんの独自なコード進行で新しいフレーズが始まっていく。Tさんも習ったばかりのスラップで変化を見せる。
奈良氏はいつも通り、横から合いの手を入れるようにベースラインを展開。
負けじとIさん、Tさんが、ともに工夫を懲らし始めていく。同じフレーズが続くのを避けるように、絶えずアドリブに挑戦し、故意に基本フレーズを変化させ用とするのだ。
それに合わせて的場氏のドラムも変化を見せる。
その変化ごとに、参加者がそれぞれにアイコンタクトを交わして、自信の演奏に入り込んでいく。
飛び入り初参加、なのにいきなり…!
ここで、レッスン初参加の女性ベーシストKさんが飛び入りで参入。
いったん仕切り直して、今度はEm、C#m、Fを繰り返しながら、Iさんには下から上に上がっていく音階、Tさんは奈良氏とともに下がっていく音階が指示される。
一方で、途中参加のKさんには、
「とりあえず3~4弦の7~9フレット付近を適当に弾いてみて」
と、奈良氏はやや突き放したかのような指示を出すだけだ。
おそらくKさんのレベルを判断するために発した指示だったのだろう。
いざ、的場氏のカウントで合奏が始まると、すかさず奈良氏はKさんに、
「同じコード進行で、今度は緩急を付けてみて!」
と声をかけている。
いつも通りIさんとTさんのアドリブ合戦が続く中、奈良氏はKさんに、次に4弦開放とE7でフレーズを構成しつつリズムをとるよう指示。
何とかKさんがついて行くと、それをフォローするように奈良氏が別のフレーズをいれはじめる。
いつしか、みなで同じフレーズを一回ししながら、順番に2小節ずつアドリブをいれていく形に。それぞれがアドリブをキメると、そのたびに奈良氏の「Yeah!」のエールが響く。ノリが高じて、アドリブの難易度が上がっていく。
そのさなか、初参加のKさんがコード進行からひらめいたのか、「Smoke On The Water」のフレーズをアドリブに織り込んできた。
奈良氏の「オッ!」の声。
そうなるとアドリブ合戦にも熱が入る。Iさんは技巧を駆使し、TさんはKさんに刺激されてどこかで聞いたフレーズをねじ込んでくる。
アドリブだけでない。それぞれの基調フレーズも、飽き足らないのか、さまざまな技巧がいれられて、それぞれに別の要素が付け加わっていく。参加者によっては練習してきた独自フレーズを披露するケースも!
もう何回目の繰り返しになるのか――。
参加者たちがそれぞれステージで演奏しているかのように必死で、楽しげで、それぞれが連携しあって、音楽が生まれていく。
奈良氏や的場氏も含め、キャリアのまったく異なる演者5人のはずなのに、聴衆をうならせる調和を奏でていることに、毎度のことながらうならせられてしまうのだ。
レッスンを超え、もはや一つのショーとして成り立っている。
そんな印象を深くした11回レッスンだった。
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