2019/09/24
イベント
レッスンレポート 「ELECTRIC BASS SPILITS」Vol.3
さる8月29日。東京・神田のStudioBpm.-kandaにて、奈良敏博氏のベースレッスン「ELECTRIC BASS SPILITS」第3弾が開催された。今回も趣向を凝らしたレッスン内容となった。
開講の挨拶に続けて、レッスンスタート。奈良氏は、まず、
「今日は単純なフレーズを弾いてもらいます。A-E-G-Aを繰り返してください」
そういって、受講者に4拍ずつ4音の繰り返しを指示。しばらく繰り返すと、今度はおもむろに、
「じゃ、次、ゴーストをいれて!」
AからEに移る前に、4拍半のタイミングで軽くAを弾いてからEへ。Eの4拍半でEを弾いてからGへ…とリズムを変化させる練習へ。
「要するにカラの音を一つ打つんです。ドラムでいうところのゴーストと一緒です。こうすることで、リズムに変化を入れることができる」
さらにゴースト入れるときに、よりビートを弾ませる技術を伝授。このときの奈良氏のアドバイスが絶妙なのだ。
「よりビートを利かすには、最後の一音に気持ちを込めるんです。これを意識するのとしないのでは、まったく違って聞こえる。楽器は、つまりは気持ちなんです」
受講者の弾く単純だったはずの音の連なりが、途端に生き生きとしはじめるから不思議だ。
次に奈良氏が指示したフレーズは、シナロケ往年の名曲「I DO LOVE ME」(!)のイントロからAメロまでのリズムだった。
最初にイントロを、つぎにAメロを覚えた受講者たちは、次にイントロ~Aメロのつなぎを指示されて苦戦を余儀なくされていた様子。それでも5分ほど繰り返すと、それなりに形になってくる。そこへ奈良氏の一声が…。
「今日はドラムに入ってもらいます」
受講者たちからは「えっ?」と、驚きの声が上がった。ある受講者がそのときの心境をこう振り返る。
「ただでさえリズムについていくのがやっとなのに、ドラムが入るなんて…。面白そうだと思う半面、足並みを乱しちゃいけないと、とにかくプレッシャーを感じました」
ここで当スタジオスタッフでもあるドラマーの的場氏が途中参戦。
「クリック代わりに入らせてもらいます…」
「ワン、ツー、スリー、フォー」
的場氏のカウントでイントロがはじまるが、はじめは受講者たちは付いていけない。奈良氏が一人一人にイントロやAメロに入るタイミングやスピードを指示。一方でイントロ部分のドラムは延々と続いている。受講者のベースがひとり、ふたりと付いてこられるようになると、ドラムは次にAメロへと移行。
こうしてなんとか、イントロ~Aメロ~イントロ…の繰り返しが音楽になっていく。
続けて、的場氏の依頼で女性のプロドラマーが飛び入り参加。
同じリズムを叩くのだが、ここが奈良氏流で、
「最初はイントロのリズムを叩いてもらいます。4小節つづけたあとにAメロに入りますが、Aメロが何小節つづくのかはドラム次第。途中で彼女がオカズをいれます。それに合わせてイントロに戻ります。そしてまたAメロ…と繰り返します」
曲の変調は、ドラマー次第。いわば即席のセッションだ。
悪戦苦闘しながらも、受講者の目がどんどん輝いていく。
つぎは、ひとつの曲の演奏中に、ベースの奏者が次々と変わっていく練習だ。
ひととおりフレーズを覚えた受講者は、奈良氏の合図でバトンタッチ。もちろんドラムはリズムを刻んでいるので、遅れられない。
「自分の順番が来てから弾き始めるのでは遅れてしまうのではないかと思うから、つねにフレーズどおりの運指を続けながら、順番を待ってました。緊張ですよ。自分の番で曲が止まったらどうしようと、とにかく必死でした」(前出の受講者)
奈良氏はいう。
「ドラムと一緒に演奏してみて分かったと思いますが、大事なのはリズムなんです。単音しか弾けなくても、リズムが合っていれば音楽になる。このときに意識しなくてはならないのが、じつはウラのリズムなんです。ウラさえとれていれば、どんなふうにも変化することができる」
そして、こう続ける。
「いまドラムと合わせていて、どう思いました? 一人で練習するより気持ちがよかったでしょ。それなんです。いくら確実にリズムを刻んでいるつもりでも、ドラムもベースも人間が弾いている。だから一定じゃない。それを、気持ち一つで合わせることができる。それは機械では無理なんですね。その時の調子によってヨレてしまうリズムを、ベースがフォローし、ドラムが合わせる。それで音楽がグッと一つになる。それが気持ちいいんです。あまりに心地よくて涙が出てきちゃうときだって、これまで数回ありました。そういう瞬間があるから、この年齢までベースを続けているんですから(笑)」
今回の練習曲に選ばれたのは、Sheena & The Rokkets の「 I DO LOVE ME.」や「SWEET INSPIRATION」、サンハウス「どぶねずみ」など、ファンにはたまらない曲ばかり。さらにはセッション風の実地練習――。
レッスン終了後も受講者たちの興奮は続いていたようだ。
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開講の挨拶に続けて、レッスンスタート。奈良氏は、まず、
「今日は単純なフレーズを弾いてもらいます。A-E-G-Aを繰り返してください」
そういって、受講者に4拍ずつ4音の繰り返しを指示。しばらく繰り返すと、今度はおもむろに、
「じゃ、次、ゴーストをいれて!」
AからEに移る前に、4拍半のタイミングで軽くAを弾いてからEへ。Eの4拍半でEを弾いてからGへ…とリズムを変化させる練習へ。
「要するにカラの音を一つ打つんです。ドラムでいうところのゴーストと一緒です。こうすることで、リズムに変化を入れることができる」
さらにゴースト入れるときに、よりビートを弾ませる技術を伝授。このときの奈良氏のアドバイスが絶妙なのだ。
「よりビートを利かすには、最後の一音に気持ちを込めるんです。これを意識するのとしないのでは、まったく違って聞こえる。楽器は、つまりは気持ちなんです」
受講者の弾く単純だったはずの音の連なりが、途端に生き生きとしはじめるから不思議だ。
次に奈良氏が指示したフレーズは、シナロケ往年の名曲「I DO LOVE ME」(!)のイントロからAメロまでのリズムだった。
最初にイントロを、つぎにAメロを覚えた受講者たちは、次にイントロ~Aメロのつなぎを指示されて苦戦を余儀なくされていた様子。それでも5分ほど繰り返すと、それなりに形になってくる。そこへ奈良氏の一声が…。
「今日はドラムに入ってもらいます」
受講者たちからは「えっ?」と、驚きの声が上がった。ある受講者がそのときの心境をこう振り返る。
「ただでさえリズムについていくのがやっとなのに、ドラムが入るなんて…。面白そうだと思う半面、足並みを乱しちゃいけないと、とにかくプレッシャーを感じました」
ここで当スタジオスタッフでもあるドラマーの的場氏が途中参戦。
「クリック代わりに入らせてもらいます…」
「ワン、ツー、スリー、フォー」
的場氏のカウントでイントロがはじまるが、はじめは受講者たちは付いていけない。奈良氏が一人一人にイントロやAメロに入るタイミングやスピードを指示。一方でイントロ部分のドラムは延々と続いている。受講者のベースがひとり、ふたりと付いてこられるようになると、ドラムは次にAメロへと移行。
こうしてなんとか、イントロ~Aメロ~イントロ…の繰り返しが音楽になっていく。
続けて、的場氏の依頼で女性のプロドラマーが飛び入り参加。
同じリズムを叩くのだが、ここが奈良氏流で、
「最初はイントロのリズムを叩いてもらいます。4小節つづけたあとにAメロに入りますが、Aメロが何小節つづくのかはドラム次第。途中で彼女がオカズをいれます。それに合わせてイントロに戻ります。そしてまたAメロ…と繰り返します」
曲の変調は、ドラマー次第。いわば即席のセッションだ。
悪戦苦闘しながらも、受講者の目がどんどん輝いていく。
つぎは、ひとつの曲の演奏中に、ベースの奏者が次々と変わっていく練習だ。
ひととおりフレーズを覚えた受講者は、奈良氏の合図でバトンタッチ。もちろんドラムはリズムを刻んでいるので、遅れられない。
「自分の順番が来てから弾き始めるのでは遅れてしまうのではないかと思うから、つねにフレーズどおりの運指を続けながら、順番を待ってました。緊張ですよ。自分の番で曲が止まったらどうしようと、とにかく必死でした」(前出の受講者)
奈良氏はいう。
「ドラムと一緒に演奏してみて分かったと思いますが、大事なのはリズムなんです。単音しか弾けなくても、リズムが合っていれば音楽になる。このときに意識しなくてはならないのが、じつはウラのリズムなんです。ウラさえとれていれば、どんなふうにも変化することができる」
そして、こう続ける。
「いまドラムと合わせていて、どう思いました? 一人で練習するより気持ちがよかったでしょ。それなんです。いくら確実にリズムを刻んでいるつもりでも、ドラムもベースも人間が弾いている。だから一定じゃない。それを、気持ち一つで合わせることができる。それは機械では無理なんですね。その時の調子によってヨレてしまうリズムを、ベースがフォローし、ドラムが合わせる。それで音楽がグッと一つになる。それが気持ちいいんです。あまりに心地よくて涙が出てきちゃうときだって、これまで数回ありました。そういう瞬間があるから、この年齢までベースを続けているんですから(笑)」
今回の練習曲に選ばれたのは、Sheena & The Rokkets の「 I DO LOVE ME.」や「SWEET INSPIRATION」、サンハウス「どぶねずみ」など、ファンにはたまらない曲ばかり。さらにはセッション風の実地練習――。
レッスン終了後も受講者たちの興奮は続いていたようだ。